非線形物理学講座

 力学は高校で習ったので大学で勉強することは残っていない、と思っているかもしれませんが、 そんなことは全くありません。高校までで習う力学では簡単な計算で解ける理想化された問題だけを扱っています。大学では、簡単には解けないもっと実際的な力学の問題を、大学で新たに学ぶ数学を使ったりコンピュータを使って解くことにより、これまで知らなかった面白い物体の運動を学ぶことができます。例えば、支点を周期的に動かしたときの振り子が示すカオスと呼ばれる不規則な新しい振動状態や、自然界で見られる波・渦などの変化に富む振舞を理解できるようになります。物理現象に限らず、心筋細胞のように各細胞が同期して心臓が血液を送り出すなど、生体の各部が同期することにより生命が維持されます。 また、工学システムにおいても各部が同期して作動することにより高度な機能をもつことが可能な例があります。
 このように、自然法則は簡明であると言われますが、これは、現象が単純であることを意味しません。 運動法則は簡単でも運動が複雑で、運動方程式を解析的に解くことができない場合があります。 このような運動はカオスとよばれ、自然現象や工学現象のいたるところに存在します。また、自然界で実際に観測される構造や運動の多くは実に多様で複雑です。最近ではコンピュータの発達により、このような現象を詳しく解析することができるようになりました。それに伴って新しい現象や概念が次々と発見され、工学的な応用が進められています。 本講座では、このような面白い新しい力学の研究をしています。 具体的には、物理系に限らない生命系・社会システム(具体的には脳神経系、人や都市のネットワーク、分子モーター等)などに現れる複雑な現象に関し、非平衡物理学・統計力学・非線形動力学・カオス力学・確率過程論などの方法を用いて、背後にある数理構造をモデル化し理解することを目指しています。

(左上)様々な現実世界のネットワーク力学系、(右上)二重振り子における初期値鋭敏性、(左下)量子モンテカルロアルゴリズムのイメージ、(右下)2次元ラチェットモデルのポテンシャル
(左上)様々な現実世界のネットワーク力学系、(右上)二重振り子における初期値鋭敏性、(左下)量子モンテカルロアルゴリズムのイメージ、(右下)2次元ラチェットモデルのポテンシャル

教員

  • 教授:青柳 富誌生 (理論神経科学・非平衡系数理グループ)
  • 准教授:寺前 順之介 (理論神経科学・非平衡系数理グループ)
  • 講師:宮崎 修次  (非線形力学・計算物理学グループ)
  • 助教:原田 健自  (非線形力学・計算物理学グループ)
  • 助教:筒 広樹   (理論神経科学・非平衡系数理グループ)

研究内容

 自然法則は簡明であると言われます。しかし、これは、現象が単純であることを意味しません。 運動法則は簡単でも運動が複雑で、運動方程式を解析的に解くことができない場合があります。 このような運動はカオスとよばれ、自然現象や工学現象のいたるところに存在します。大きな自由度をもち、要素間の相互作用もある非線形系の力学的挙動は、複雑であり多様性に富む一方で、規則的な構造の形成など、多くの系に共通した普遍的な性質を持っており、大変興味深い研究対象です。本講座では、理論的解析や計算機を用いたシミュレーションにより、このような力学系のさまざまな複雑挙動の解明や制御をめざすとともに、その中に含まれる共通原理を明らかにします。本講座では、非線形力学・計算物理学や理論神経科学・非平衡物理学などのキーワードによる、緩やかなグループを形成して、教育と研究を行っています。

主な研究テーマ

  • 計算論的神経科学・脳の数理モデル
  • 変化するネットワーク上の結合力学系
  • リズム現象の解析(引き込み転移・同期現象)
  • 射影演算子法を用いた時間相関や大偏差統計関数導出の系統的近似
  • 社会学・経営学に現れる(合意形成、イノベータ理論、キャズム等) の複雑ネットワークなどを用いた数理モデル化
  • 確率モデルによる分子機械(分子モーター)の理論的研究
  • ゲーム理論を応用した社会・経済現象(価格変動など)のモデル化
  • 量子情報に基づく計算フレームワーク(テンソルネットーワーク)
  • 量子物質、非平衡定常系(交通流、風下の火災伝搬)

研究室ウェブサイト

http://www-np.acs.i.kyoto-u.ac.jp/