合意情報学分野
我々は,人々とコンピュータやAIエージェントが互いに合意し協力する集団的知性(AI powered Collective Intelligence)に興味を持っています.人間の集団的知性は個人の知性を凌ぐことが最近の研究でわかっています.ネットワークで高度に接続されたコンピュータやAIが人間の集団に加わることで,大規模かつ効率的により高度な知性を発揮できる可能性があります.近年の大規模言語モデルに代表されるAI技術の発展は目覚ましいものがあり,飛躍的に高精度なAIエージェントが実現できています.これらのAIエージェントや人々が互いに合意し協力することで,これまでにはない集団的知性が発揮され、全く新しい社会システムの実現を目指しています.
マルチエージェントAIは,新しい社会システムを実現し人間の集合的知性を知能情報技術によって促進するための方法論や概念を提供します.合意情報学分野では,主に社会の知性の本質を探りながら,新しい社会システムの可能性を探求し,社会実装します.本分野では,AIやマルチエージェントAIを中心に,合意形成支援,計算論的メカニズムデザイン,自動交渉エージェント,大規模言語モデル,分散強化学習,サービスコンピューティング,IoT,議論理論,社会シミュレーション等について研究を行っています.そして,高い理想を目指す理論研究と厳しい現実を直視する事業・ビジネス化の両方を追及します.
教員
- 教授:伊藤 孝行
- 講師:蟻坂 竜大
- 助教:丁 世堯
研究内容
テーマ1:AIによる合意形成支援
エージェント技術による大規模合意形成支援システムの社会実装:本研究では,大規模言語モデルに基づくAIエージェントを用い,大規模な数の人たちの意見を効率的に収集し合意形成を支援するシステムを実現し,社会実験で検証し,事業化まで行っています(ビジョン:https://www.youtube.com/watch?v=kHHIuy6gJrY).
テーマ2:社会メカニズムデザイン理論
計算論的メカニズムデザインやオークション理論の追求:計算論的メカニズムデザインは,情報学の観点からゲーム理論やミクロ経済学で社会的に望ましいメカニズムの設計を目指します.
テーマ3:自動交渉エージェント
自動交渉エージェントモデルとその国際競技会:人間の代理で交渉するエージェントの設計と実装や,交渉を行い社会選択をするための仕組みの設計と実装を行なっています.さらにそれらの国際競技会を開催しています.
テーマ4:高度会話エージェント
大規模言語処理LLM/GPTを含む自然言語処理技術や機械学習技術を用いて高度会話AIエージェントを実装し応用を行なっています.
テーマ5:社会シミュレーション
大規模マルチエージェントによる社会シミュレーション:現実には実現できないような社会システムや制度をマルチエージェントシミュレータ上で実現します.
事業化
産学連携,及びスタートアップ・ベンチャー企業を立ち上げ:研究によって得られた知的財産(特許など)をコアにチームを構築しスタートアップを構築する.共同研究は,対話を重視しお互いに価値を醸造することで,お互いの強みを練り込んだ強靭な技術やサービスの構築を行います.研究成果に対する評価を、現実社会にて問います.
研究室ウェブサイト
http://www.agent.soc.i.kyoto-u.ac.jp/